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2018年2月26日 (月)

みんなは特急列車に乗り込むけど

小学生の時、
名古屋に住むおじさん(母の妹のご主人)が本を贈ってくれた。
我が家に限らずその頃(昭和30年代)の一般家庭には、
子供の本としてはマンガ雑誌があるくらいのものだったと思う。

その岩波少年文庫の「星の王子さま」は、
小さいながらもまるで大人の本のようなちゃんとした丸背製本で、
スベスベの紙のカラー口絵も2枚ついていて、
ピンク色の連続模様の表紙もお洒落で、
「本」としても丁寧に作られている、
美しい本だった。


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▲これは後年買いなおした岩波書店版。岩波少年文庫版ではありません。
 (今の少年文庫版は新書のような造本)



ドイツのシュプランガーという心理学者によると、
なにを価値観とするかで、
人間は6つの型に分けられるという。

 ●理論型:論理的なこと、真理・真実に価値をおく。
 ●経済型:お金ですね。
 ●審美型:美しいもの、楽しいもの。
 ●宗教型:博愛、道徳。
 ●権力型:その名の通り。
 ●社会型:奉仕、福祉。周りの人への愛。

もちろんこんな風にハッキリ分けられるものではなく、
誰もがいくつも混ざり合ってるものだろうが。

ネットにそんなテストがあったのでやってみたら、
ぼくの場合は「審美型」ということだった。
まあ、当てはまらない部分もあるが、
少なくともお金とか権力とかに、
あまり魅力を感じられないのは確かだ。
良いとか悪いとかではなく。

「星の王子さま」の王様、実業家、
自惚れ屋、地理学者、酔っぱらい、点灯夫、
そしてキツネ、バラ、
それらに受けた影響が、
その後の生き方に大きく尾をひいているように思う。



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▲「星の王子とわたし」内藤濯(ないとうあろう) 1976年 文春文庫
 ある程度以上の年代の人にとっては「星の王子さま」といえばこの人の訳。
 これはその訳者のエッセー。
 




じつはぼくにも、
お金や名誉を求めた時期があった。
30過ぎてデザインの仕事を始め、
それが次第に軌道に乗り始めると、
欲が出た。

もっといい仕事を取りたいと、
それには外見を取り繕わなければと、
服を仕立てたりもし、
「人を動かす」といったような啓発本を読んだりもし、
きちんとネクタイを締め、整髪料をつけ、
常に自分の現在地を計測し、行く先を定め、
その為の方法を考え・・・、
そんな時間に充実を感じていた。



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幸か不幸か、
その「成功」にたどり着けなかったのは、
それだけの才能がなかったということもあるだろうが、
多分無意識のうちに、
そこへは行きたくないと思ってたからだ。
行き着いてれば、
今頃キノコになっていた。
危ないところだったと思う。
(キノコになった自分は今の自分を笑うだろうが・・・。)



今、人生の大半を終え、
人から見れば、
金も地位も名誉もない、
ただの貧相なむさ苦しいおっさんだろうが、
それでいい。
今の自分で良かったと思っている。

お金や権力というのは、
車のようなものだ。
快適で便利なものだけど、
上手く乗りこなせない者が乗ってしまうと、
事故を起こし自他ともに不幸にしてしまう。


  みんなは、
  特急列車に乗り込むけど、
  いまではもう、
  なにをさがしてるのか、
  わからなくなってる。
  だからみんなは、
  そわそわしたり、
  どうどうめぐりなんかしてるんだよ・・・

  ごくろうさまな話だ・・・

  「星の王子さま 25」訳:内藤濯



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会うこともないままに、
名古屋のおじさんは、
若くして亡くなってしまった。
まだ30代だったろうと思う。



会ったこともない親戚の子に、
本を贈ってくれたのは、
おじさんのところに娘さんが生まれた、
その喜びでの気まぐれだったのかもしれない。
幸せのお裾分けのような。

その理由がどうであれ、
おじさんが贈ってくれたその一冊の本、
その本が種になり、
今のこの部屋になった。
ぼくの最初の道しるべになり、
折々の分かれ道にも道しるべになってくれた、
その出会いに、
おじさんの年をはるかに超えた今、
あらためて感謝している。

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「週末図書室」として、
この部屋を、毎週金・土の5時から9時まで開けてます。
本や猫の好きな方は、
お気軽にお越し下さい。
立派な本はありませんが、
ガロとか、つげ義春とか、
ネコマンガとか落語の本とかがあります。
意外とそういった本がいい道しるべや、
いい道連れになったりするかもしれません。
立派な本には他所でも出会えますしね。





コメント

歳を重ねると涙もろくなって、グスグスしながら毛布にくるまって読みました。「道しるべ」の話をしにぶらん亭に行こう。
そして一心不乱に読み耽ろうっと。

poppoさん
ありがとうございます!
ぜひゆっくり、読んだり話したりいたしましょう。
予約頂ければ朝からでも空けときますよ!

わあぁぁ〜い(๑・̑◡・̑๑) 行ける日が決まったら「予約」します!

待ってま〜す!

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